漆の声を聞き
漆と語らい
漆と遊ぶ
Toshihiko Iwataの工房に伺い、今回のためにお預かりした名もなき自由な漆板たち。
作為のない漆板は古物のような佇まい。
ただ集めてならべるだけで時間を語るように雄弁です。お茶の時間、小さな宝物やお菓子をのせても。
絵でも道具でもない、自由な存在です。
素材: 漆、木
Size:約9x8.5cm
【 About Toshihiko Iwata 】
経歴/ 1970年 神奈川生まれ
東京藝術大学美術学部工芸科漆芸専攻卒業
現在、神奈川県鎌倉市で製作を行う
2024年 「蝕-Erosion」
Whism乗興院(台北)
Place in my heart
POLA MUSEUM ANNEX(東京)
フォーシーズンズホテル大阪
Vip room 大型屏風 作品 など
【 Public collection 】
ポーラ美術財団
モンブラン文化財団
佐藤美術館
三嶋大社
【 岩田 俊彦からの言葉 】
漆液は、漆の木の血液といってよい。漆が固まるプロセスも、私達人間がケガをした時に血液が染み出し、かさぶたを作る酵素反応という作用に依拠しているからだ。
漆は、温度や湿度の差異、混ぜ入れる材料の違い等によって、実に様々なかさぶたをかたち作る。例えば漆を厚く塗ると縮み、塗膜の表面にしわが表れる。
それは、通常の漆塗りの工程では、失敗にあたるものだが、私はむしろそうした人知では及ばない、自然が醸し出す景色のようなものに心震え、その痕跡を慈しみながら一つの作品へと昇華させていく。
作品が出来上がっていく過程において、主体はあくまでも漆をはじめとした素材であり、彼らが結びつき、結晶化していく為には、どのように動き、どのようになりたいのか。
声なき声を聞きながら素材の意思に従って作業を進めていくのが私の役割。
漆を人間の側に引っ張ってくるのではなく、こちらができるだけ漆の方へ寄り添っていく。そんなものづくりをしていきたい。